10代の頃からPMS(月経前症候群)に悩まされている。関連本・ウェブサイトはもう数えられないくらい読んだ。今は漢方薬を試している。
良いことが一つだけある。
時間と気持ちに追い詰められ、思わぬ力が湧く…ことがある。不可抗力なのだ。体調が悪い中、ペンを持つ手だけが動く。期間限定、[天才芸術家]が誕生する。天才芸術家は、家事をせず、家に篭り、感情任せの言動を繰り返す。一番被害を被るのは、いうまでもなく夫である。
大きな「壁」が頭の中に立ちはだかっている。とにかく「壁」は厚く、高い。天才芸術家は「負けてたまるか」と全力で立ち向かう。死にものぐるいで「壁」を越える。心身ともに疲労困憊。こんなに頑張っているのに、周りの応対はいつもと同じ。猛烈な怒りと悲しみがこみ上げてくる。自分を認めてくれない人が悪魔に思える。逆に、一言優しい言葉をかけてくれる人は後光が差して見える。この人のために頑張ろう。天才芸術家は情に弱い。
「壁」は1枚ではない。次々に現れる。乗り越える度に自分は強くなっているのだと言い聞かせる。才能は無限なのだ!!
疲れた時は、甘いものを口いっぱいに頬張る。甘いもの=麻薬である。あっという間にエンドルフィンが脳内を駆け巡る。胸焼けがしても止められない。
体温が高く、夜眠れない。布団の中でスマホ画面を凝視し続ける。情報の全てが刺激になる。心臓が波打ち、いても立ってもいられなくなる。
逆に昼間はだるく、全身に風邪を引いた時のような痛みがある。乳房痛。時々偏頭痛。それでも今日中に「壁」を乗り越えなければ…。
こんな状態にほとほと嫌気がさす。天才芸術家の誕生からすでに約2週間以上経過している。全て脳内だけの出来事。見た目に大きな違いはないため、天才芸術家の存在はほぼ誰にも気づかれない。
一度精神科へ…?イヤ、荷物をまとめてどこかへ逃亡…と思い始めた頃に生理がくる。
ガクッと力が抜ける。張り詰めていたものが一気に緩み放心状態で1週間。天才芸術家はどこかへ消えてしまった。それから何週間かが[フラットな自分]でいる時期である。淡々と身の回りの事をこなす。甘い物は本当に食べたい時少しだけ。周囲に悪魔も仏もいなかった。「壁」は、猛烈に高いわけではなく、自分の位置を低く思い込んでいるだけだった。ただ、乗り越えた数に少々驚く。何もこの時期にそこまでやらなくても…と、天才芸術家の頑張りを心の中でねぎらう。
こんなサイクルを気がつけば20年以上繰り返している。